治らない病気である腎臓病を治したい
治らない病気である腎臓病を治したい。その思いで研究を継続しています。糖尿病や膠原病なども難治性疾患であり、それらを完治させる治療は発見されていません。おそらく、これらの慢性疾患には共通した機序が根底に存在するのではないかと考えています。それらの病気の原因には人体が本来有する再生機構が関係しているような気がするのです。
私が理想とする臓器再生は、新たな臓器を実験室で作り出そうとする試みではなく、障害を受けた細胞や臓器そのものが自らの力で再生するといったものです。
今回、この野心的な試みに賛同していだいた企業との共同研究講座を開始できることになりました。今日まで積み上げてきた研究や臨床経験を総動員して、難治性疾患を治すための努力を行いたいと思っています。
滋賀医科大学 再生医療開拓講座
特任教授 仲川 孝彦
共同研究講座の開設にあたりご挨拶
糖尿病の研究は医学部3年生から開始しました。学部生でしたが、糖尿病の講義をしておられた先生に誘われて、糖尿病のサル病棟の病棟医長になりました。本格的な研究は医師になってすぐに開始しました。糖尿病は一旦かかると治らない病気であり、どうすれば自然に治るのかという研究テーマはありませんでした。糖尿病と合併症の進行を防ぐために、どうすればよりよい血糖コントロールができるのかが研究の全てでした。
大学院で糖尿病という病気の全体像をひととおり理解しました。しかし、血糖値のコントロールと糖尿病合併症の関係を研究すればするほど、「なぜ糖尿病が治らないのか」という根本的な疑問にぶつかることが多くなり、深い闇の中に落ち込んでばかりでした。そこで、問わないことが不文律になっているこの疑問に真正面から立ち向かうことにしました。ここ数年の研究で様々な難題が解決し、糖尿病はがんと同じ仕組みで幹細胞の異常で発病することがわかりました。そして、がんを治してしまう方法と同じ方法で治療できるという、研究の最終ゴールが見えてきました。実に40年近くかかりました。
この研究は私が独自の発想で進めてきたものであり、同じアプローチで研究を行っている研究者はほとんどいません。もし私がこの研究を中断すれば、多くの命を救うことができるいまある機会がずっと先に遠のいてしまうでしょう。しかし、本学では産学共同研究講座の制度が整っており、私たちは研究を継続することができています。この研究を一刻も早く社会に実装するため、今後もあらゆる努力をして参ります。
共同研究講座とは、大学と民間機関が対等な立場で共通の課題に取り組む制度です。大学は民間機関から研究者や研究費を受け入れ、学外との連携を強化し、優れた研究成果を生み出すことを目指しています。この制度を活用し、さらなる研究の進展と社会への貢献に努めてまいります。
滋賀医科大学 再生医療開拓講座
特別教授 共同研究講座長 小島 秀人